今回の新月は日本では見られませんが、部分日食です。月は、太陽の前を横切る少し前に、金星のごく近くをかすめて通ります。太陽、金星、月は、ほとんど同時に蠍座へ。この様子が、中近東の古い神話を表しているように思えてなりません。
それは、金星の女神イシュタルの物語。イシュタルは、死んでしまった恋人を、現世へ連れ戻すために、冥界へ向かいます。冥界の奥へ進むには7つの関門があり、イシュタルは王冠や耳飾りや首飾りなど、光り輝くものを、関門の番人たちにひとつずつ渡して、最後には裸になってしまいます。
イシュタルは豊穣の女神であり、光り輝く宝飾品は、女神の持つ生命の力を象徴します。豊穣の女神が生命の力をひとつずつ、奪われていく。これは、季節が冬に向かう様子を示しています。部分日食で力を失う新月とともに蠍座に入る金星は、まさに、少しずつ光をそがれていく女神の姿を描いた、太古の神話を強調しているように見えます。
そして、このような星の配置は、地上の女性たちにも影響を及ぼすでしょう。そう、このコラムを読んでいるあなたにも。
冥界……死者の国へ行くだなんて、恐ろしいことのように思えますが、それは生命の力を維持するために必要なことでもあります。女神は地底のいちばん深いところへ降り、そこにいる女王から、命を復活させる水をもらって、また地上に戻ります。帰り道では、奪われた宝飾品をひとつずつ取り戻して、女神は徐々に輝きを増します。
この物語は、地上で植物が実り、種となって土の中で冬を過ごし、春に芽を出す生命のリズムを意味しています。いつも変わらぬ輝きを放つものは、生命のないイミテーション。成長したり、休んだりを繰り返すリズムを持っているのが生命です。
みんなに笑顔を振りまき、仕事もバリバリがんばって……というのは理想的ですが、そればかりでは疲れてしまいます。新月とともに蠍座に入る金星は、私たちに休憩のときが来たのを知らせています。将来、大きな花を咲かせるためには、十分な眠りが必要です。
この機会に、質の良い睡眠がとれるように工夫しましょう。うれしいことに、この金星&新月には、眠りと夢と癒しの星である海王星が、援助する光を投げかけてくれています。今、よく眠っておけば、生命の力を蓄えることができるでしょう。美の女神金星とともに、あなたも快適な眠りを。
それでは、また満月の日にお会いしましょう。ぐっすり、おやすみなさい。
七宮 昴 (スピカ☆スタジオ)